
1.バリア性の必要な用途で検討できるフィルム材料は?
フィルム材料の「バリア性」については、水蒸気や酸素、窒素、二酸化炭素など、いくつかの観点がありますが、ここでは主に酸素透過に対してバリア性のあるフィルムを紹介します。フィルム材料としては、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、PVDC(塩化ビニリデン)フィルムが対象になってきます。
- EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)
- PVDC(塩化ビニリデン)
| EVOH | PVDC | |
| 酸素バリア性 | PETの約1/50以下 PEの約1/5000以下 | PETの約1/10以下 PEの約1/1250以下 |
| 水蒸気バリア性 | 低め(湿度に弱い) | 高い |
| その他物性 | 透明性高い 耐熱性中程度 耐溶剤性高い | 使用環境により黄変 耐熱性は比較的低い |
| 特徴・用途 | 食品包装用途(積層) 自動車用燃料タンク等 | 食品包装用途(ラップ等) 医薬品包装 等 |
2.EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)フィルムの特徴
EVOHフィルムは、エチレンとビニルアルコールの共重合体のフィルムです。ポリビニルアルコール(PVA)は乾燥状態では高い酸素バリア性を示しますが、水分を吸収しやすく吸収すると酸素バリア性が大きく低下します。このため、水分の吸収を抑制するため疎水的なエチレン成分を共重合して、総合的に一定の耐水性と酸素バリア性を両立する材料となっています。
とはいえ、基本的にPVAのような含水性は残るので、高湿状態では酸素バリア性は低下します。そのため、他の疎水的なフィルム(PPやPET等)とのラミネート形態などで使われます。また、EVOHフィルムは耐溶剤性が高いことが特徴です。
EVOHフィルムの使われる用途は、食品用途として、肉やチーズの真空包装、透明パウチ、レトルト袋などが主要の用途です。また、溶剤等に耐性があるので、自動車燃料タンク、有機溶剤や農薬の容器、香料の使われる化粧品の容器などに使われます。
EVOHフィルムの用途は、基本的にバリア機能が必要な包装や容器などの用途になります。ただ、バリア機能性を特徴としたフィルム用途で使おうとすると、水分への弱さから積層などが必要となり、他の選択肢、例えば汎用フィルムに防湿層を付与することとの比較になります。市場での入手はクラレや日本合成化学等がメーカーの選択肢となります。
3.PVDC(塩化ビニリデン)フィルムの特徴
PVDCフィルムは、ポリビニリデンクロライドという塩素含有ポリマーのフィルムです。そのポリマー分子構造と塩素を含むことで、高い酸素バリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ材料です。
PVDCフィルムは、酸素バリア性と耐水性を両立することが特徴ですが、弱点としては、塩素を含むことにより、フィルムとして黄色化しやすい、焼却時の塩酸発生などのハロゲンリスクがあります。耐熱性としてはあまり高くなく、125℃程度で熱分解が起きるとされてます。
PVDCフィルムの用途としては、食品包装用のラップがよく知られています。酸素バリア性と耐水性を合わせもつので、フィルム単体で用いられています。また、医薬品では防湿性が高いことも用途としての特徴です。PVDCは防湿コートとしても用いられ、セロハンのPVDC防湿コートフィルムは飴や包装などにも使われます。一方で、塩素を含有することは焼却時の塩酸発生などのリスク要因となります。
PVDCフィルムはクレハや旭化成の食品包装用ラップがよく知られていますが、バリア性フィルムとしては塩素含有ポリマーという材料の制約もあり、あまり用途的には広がりは小さい印象です。
4.バリア性フィルムを選定する際のポイント
バリア性フィルムとしては、ポリマー材料としてはEVOH、PVDCが選択肢にはなりますが、耐水性や塩素含有といった材料選定上の制約があります。このため、汎用のフィルム材料であるPETやPPに、アルミやSiO2などの防湿機能層を付与するフィルム加工材料で対応することが多くなっています。
既存の包装領域では、EVOHやPVDCが選択肢になりますが、ペロブスカイト太陽電池用シート製造などの機能性フィルムとしてバリア性フィルムを検討する場合には、SiO2蒸着などのフィルム材料がターゲットになってくると思います。
これらのフィルム材料の加工、複合化については、今後の記事でお伝えできればと思います。
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