
1.耐熱性の高い用途で検討できるフィルム材料は?
フィルム材料として耐熱性が要求される場合、これまでご紹介したフィルム材料の中では、PETやTACフィルムが選択肢となります。さらに高い耐熱性が必要な場合は、PEN、PI、特殊なポリオレフィン系樹脂のフィルムがターゲットになるのではないでしょうか。
- PEN(ポリエチレンナフタレート)
- PI(ポリイミド)
- 特殊ポリオレフィン:耐熱性COC・COP(シクロオレフィンコポリマー/ポリマー)、PMP(ポリメチルペンテン)
| PEN | PI | 特殊ポリオレフィン | |
| 透明~高透明 | 透明~高透明 | 透明性は中程度 | |
| 耐熱性(連続) | 120~150℃前後 | 200~300℃ | COP/COC:~160℃ PMP:~125℃ |
| 光学的特性 | 透明 | 汎用:黄色味 透明PI:透明 | 高透明 |
| 特徴・用途 | 耐熱テープ、プリント基板など |
2.PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムの特徴
PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムは、PETの繰り返し構造のテレフタル酸をナフタレン環構造に置き換えることで耐熱性を高めたものです。
基本的な物性はPETに近いと思われますが、耐熱性、ガスバリア性、強度などが向上しているとのことです。
PENの使われる用途は、高耐熱や耐久性などの信頼性が求められる電気・電子用途、具体的にはモーター・トランスなどの電気絶縁用途、フレキシブルプリント基板用途、太陽電池などのITOコートPENなどが挙げられます。
PENフィルムの用途市場は、過去、写真用フィルムに使われたこともありますが、現在はPETのような汎用的な用途よりも、目にはつきにくいですが、信頼性が求められる耐熱・耐久用途で市場を獲得しているようです。市場での入手としては東洋紡のテオネックス®が選択肢となります。
3.PI(ポリイミド)フィルムの特徴
PI(ポリイミド)フィルムは、耐熱性の高いイミド環構造をポリマーの主骨格とするフィルムで、イミド環の置換基や構造でいくつかのメーカーの材料があります。
PIフィルムの特徴は、まずは有機ポリマー系材料の中でのその高い耐熱性になります。耐熱性としては200~250℃、短時間では300~400℃という特徴がうたわれています。一方、材料の構造的に着色(黄色から褐色)しやすいため、着色を抑えた透明PIのフィルム材料もあります。また、機械強度、折り曲げ生等に優れる特徴もあります。
PIフィルムの用途としては、PENフィルムと同様の高耐熱や耐久性などの求められる電気・電子用途ですが、具体的にPIの用途を見ると、フレキシブルプリント基板用途では耐ハンダ性(260℃)が求められる用途、電気絶縁用途では耐放射線なども必要な航空・宇宙用途、その他耐熱テープではPIテープの実績がある、太陽電池や半導体プロセスなどの高温プロセス用途などが挙げられます。また、折り曲げなどが必要なフレキシブルディスプレイでは透明PIフィルムが選択肢となる様です。
PIフィルムはデュポンのカプトン®が1960年代から耐熱フィルムとして実績があり、その後PENフィルム等が浸透してきたという流れがあり、電気・電子用途の耐熱フィルムではこれらのフィルムが選択肢のなるのではないでしょうか。また、フレキシブルディスプレイなどの領域では透明PIの用途展開が検討されているようです。
4.特殊ポリオレフィンフィルムの特徴
耐熱性の高いフィルム材料として、耐熱性のCOC/COP(シクロオレフィンコポリマー/ポリマー)、PMP(ポリメチルペンテン)などがあります。COC/COPはシクロオレフィンという環状構造を有するポリマーです。PMPはPEやPPの延長線上の分子構造です。これらは、基本的にオレフィン構造(炭素と水素からなる構造)とみなせるため、ここでは特殊ポリオレフィンとしています。
これらの特殊ポリオレフィンフィルムの特徴は、耐熱性とともに、その光学的な透明性や、化学的に安定で吸湿性が低いことにあります。耐熱性としては、COP/COCは環構造を有することで比較的高く、PMPはPENと同程度になります。フィルムの機械特性としては、中程度の物性になります。
特殊ポリオレフィンの用途としては、医療用途や光学用途などがあります。医療用途では、スチーム滅菌耐性を有することが特徴で化学的にも安定なことから、PPなどでは対応できない用途にPMP、COPなどが用いられます。光学用途ではCOP/COCなどが高い透明性のため用いられます。また、寸度の安定性やバリア性も特徴です。
特殊ポリオレフィン用途は、耐熱性だけでなく、その透明性や化学的安定性を生かした医療用・光学用途に浸透していると思われます。
5.高耐熱性フィルムを選定する際のポイント
高耐熱性フィルムを選定する際には、その必要な耐熱温度領域と、それに加えて、その用途における材料要求(耐熱性の他、高い信頼性が必要、医療用途や光学用途を想定)が材料を選ぶポイントになります。
汎用用途での高耐熱性(保護用や印刷用に使うが温度がかかる等)の場合には、手に入りやすい材料で一定ののあるPETやTACなどが選択肢になると思います。
電気・電子など、高い耐久性が必要な用途では、その使用温度領域に対応して、PENやPIを選択肢と検討することになるのではないでしょうか。また、さらに耐熱性・耐久性の高い用途にはガラスフィルムも視野に入ってきますが、コストや入手性等も考慮し、今回は割愛しました。
医療や光学用途では、COC/COP、PMPが主な選択肢ですが、折り曲げ等の機械的特性の要求がある場合には、透明PIなども検討反中になると思います。
フィルムの選定の際には、用途や要求事項などの検討に今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。
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