フィルム表面の電気特性付与のニーズ
フィルムの表面を機能化したいニーズとして、電気特性、特に導電性付与があります。フィルム材料は一般的に絶縁体のため、その表面に導電性を付与するための材料およびその加工技術を紹介していきたいと思います。
フィルム材料の導電性付与の目的としては、導電性のレベル(表面抵抗)によって、帯電防止、導電層、電磁波防止等があります。また、フィルム材料として不透明の場合は金属膜を形成する方法が用いられます。一方、透明な導電層では、材料や加工の様々な技術検討がされています。
| 材料技術 | 加工技術 | 表面抵抗(領域) Ω/sq | 可視光 透過率 | |
| 帯電防止 | 帯電防止剤 導電性ポリマー 導電無機粒子層 | 塗布加工 | 10⁸ ~ 10¹² | 90~95% 以上 |
| 透明導電 (電極) | 透明導電膜(ITO) 銀ナノワイヤ等 | スパッタ 塗布加工 | 10 ~ 10³ | 85~92% |
| 透明EMI (電磁波防止) | メタルメッシュ ITO+誘電体多層膜 等 | 印刷・フォトリソ スパッタ 等 | 10⁻2 ~ 1 | 80~90% |
| 金属膜 ・電極/EMI | 金属薄膜 | 蒸着 スパッタ メッキ | 10⁻4 ~ 10⁻2 | 0~50% |
フィルムの帯電防止の技術
フィルム材料は、主に絶縁性の有機高分子材料であり、フィルムの取扱い時や搬送においてフィルムが帯電し、放電による電気スパークやごみ・ほこりの静電的付着が起きるという課題があります。このフィルム材料の帯電対策として、主に表面に帯電防止性を付与するニーズがあります。通常、帯電防止処理をしていないフィルムの表面抵抗は10¹³ ~ 1017Ω/sq程度ですがこれを10⁸~10¹²Ω/sqに下げることによって、フィルムの表面に蓄積した電荷が徐々に減衰し、放電等のリスクが下がります。
フィルムの帯電防止として、フィルムの表面をけん化により親水的にする等の手段もありますが、確実な帯電防止のためにはフィルム表面に帯電防止剤による層を付与します。帯電防止剤としては、イオン性の導電性を有する界面活性剤やイオン性ポリマー、無機粒子表面に導電性を付与して導電粒子の接触により導電層を形成する、導電性ポリマーをフィルム表面層に付与する等の材料技術があります。これら帯電防止剤は、通常塗布加工によって付与されます。なお、表面親水化やイオン性帯電防止剤は湿度環境の影響を受け、低湿度では表面抵抗が上がる傾向があります。
透明導電フィルムの技術
フィルム材料を電極として利用する場合は、帯電防止よりも表面抵抗が低く、湿度などの影響を受けにくい導電材を用いる必要があります。このような用途としては、タッチパネルディスプレイ用の電極フィルム、透明ヒーターフィルムなどがあります。このような用途では、透明導電膜(ITO)や、最近では銀ナノワイヤ等の材料が用いられます。
透明ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)は、無機系材料の導電層で、主にフィルムへのスパッタリングによって加工されます。銀ナノワイヤーは、金属銀の直径サブミクロン(ナノオーダー)、長径数μm以上のワイヤーをネットワーク状に層形成し導電性を付与します。銀ナノワイヤーは塗布加工により形成し、導電性を付与する特殊加工を行います。現在、透明導電フィルムとしてはITOが主流ですが、銀ナノワイヤはフレキシブルでフィルムを曲げても割れにくいという特性を生かした用途で広がっています。
透明EMIの技術
透明導電フィルムより、さらに低い表面抵抗が必要な用途として、電磁波遮断(EMI)フィルムがあります。これは、電子機器を外部からの電磁波の影響から保護する機能で、電磁波を反射・吸収するために低い表面抵抗が必要になります。このような領域で用いられる材料は、金属膜か、ITOとSiO2などの誘電膜の多層フィルムになります。透明EMIの場合には、金属膜ではメタルメッシュとしてフィルム表面に加工する必要があります。
ITOと誘電膜の多層積層は、主にスパッタにより加工されます。メタルメッシュの場合は、フォトリソグラフィーやメッシュ状の印刷加工が行われます。透明EMIは、現在一般ディスプレイや医療用ディスプレイはITOと誘電多層膜が多いですが、よりEMI要求が高い領域では金属膜の性能が必要なため、車載(EV等)ではメタルメッシュ化が主流となっています。
金属膜の技術
フィルム材料に導電性を付与する方法として、透明の必要性が低ければ金属膜が用いられます。金属膜の加工には、スパッタや蒸着が用いられることが多いです。
金属蒸着フィルムは、市販でAl蒸着フィルムなどありますが、導電用途では銀や銅が用いられます。また、遮熱フィルムなどの用途では、一定の可視光透過率を付与しながら、金属や金属の多層膜が形成されているフィルム材料があります。
まとめ
フィルム材料は主に絶縁性の基材ですが、帯電防止などの導電性付与のニーズがあります。また、柔軟性のあるフィルム基材に導電層を付与することで、電極用やEMI用などの用途に用いられています。
フィルムの導電性付与では、光学的に透明であることと導電性の両立という課題に対して材料・加工の技術開発がされています。また、最近ではフレキシブル化や高いEMI性の付与という課題に対して開発が進んでいます。一方で、透明性の要求が厳しくない用途では金属膜が主流で、さらにこの技術を応用した遮熱フィルムなどの用途が広がっています。
フィルムの表面の導電化技術に関して、今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。
問い合わせ・アンケート
S&A開発支援ラボではビジネスや開発でのお困りごとについてアンケートをお願いしております。


コメント