ろ過用途の多孔膜:構成する素材

材料技術

ろ過用途の多孔膜に用いられる素材

ろ過用途の多孔膜に用いられる材料(膜の基礎となる素材)は、そのろ過用途に適した孔径を得られる、という点から、用いる材料と多孔膜形態が絞られます。また、用途に適した材料を選ぶ必要が生じる場合もあります。孔径と用途適性の観点で多孔膜材料を見ていきたいと思います。

ろ過区分おおよその
分離領域
主な分離対象代表的な材料 
有機材料系
代表的な材料 無機・金属系多孔膜形態
粗ろ過数µm~数mm砂、繊維、凝集物、沈殿物、比較的大きな粒子ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ナイロン、セルロース(繊維)ステンレス鋼、金属焼結体、 ガラス繊維、セラミックス繊維・不織布 焼結体
精密ろ過 (MF)約0.1~10 µm懸濁物、細菌、酵母、油滴、微粒子ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、セルロース系、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)セラミックス相分離膜 延伸膜 粒子焼結(セラミックス)
限外ろ過 (UF)約2~100 nm、分画分子量で規定されることが多いコロイド、タンパク質、多糖類、ウイルス、高分子PVDF、PES、PSf、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロース系セラミックス相分離膜 粒子焼結(セラミックス)
ナノろ過 (NF)約0.5~2 nm、数百Da程度多価イオン、硬度成分、色度成分、低分子有機物芳香族ポリアミド複合膜、スルホン化高分子、セルロース系、セラミックスNF膜複合膜中心 (多孔膜+分離層)
逆浸透 (RO)実質的に非多孔質一価・多価イオン、溶解塩類、低分子有機物芳香族ポリアミド薄膜複合膜、酢酸セルロース系膜 複合膜中心 (多孔膜+分離層)

粗ろ過領域で用いられる材料

粗ろ過は、精度の必要なろ過(MF・UF・NF・RO)の前処理や、液・気体などの流体の異物除去、またろ過による粉体などの回収など、広い領域の用途があります。また、粗ろ過の対象となる流体としては、気体や液体、その粘性や温度、ろ過流体が酸・アルカリ・有機溶剤・反応性や腐食性のあるものなど、さまざまなケースがあります。また、粗ろ過プロセスでは、一般にろ過精度よりもろ過の処理量やろ過工程においてろ材の交換寿命が長いなどの要素が重視される傾向があります。

粗ろ過の領域ではろ過精度の要求が厳しくないため、繊維・不織布・焼結体などの様々な形態があります。素材としては、有機材料系は不織布や繊維の織物、金属は繊維の焼結体、ガラス繊維やセラミックス焼結体など、強度や耐久性、使用時の寿命等を考慮した材料が用いられます。有機材料系のろ材は比較的低粘度の液体、金属の焼結体は高粘度の液体、セラミックス系は酸・アルカリや高温流体で用いられることが多いと思います。

MF・UF領域で用いられる材料

MF・UF領域のろ過用の多孔膜材料は、孔径の精度が要求されます。このため、多孔膜材料としては孔径の制御しやすい、有機材料系等の相分離膜や延伸膜が主流です。また、セラミックス系はその焼結する粒子径などの制御でこの領域の材料が作られているようです。

MF・UF領域の孔径設計できる有機材料については、相分離による孔形成として、樹脂の溶液状態での相分離現象を活用した非溶媒誘起相分離法(NIPS)と、樹脂同士の高低温での相分離現象を活用した熱誘起相分離法(TIPS)があります。また、樹脂膜の延伸により孔を形成する延伸法もあります。NIPSに適した有機材料としては、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)などがあります。TIPSに適した有機材料として、PVDF、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などがあります。延伸法に適した材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PE、PPなどです。

これらのMF・UF領域の用途では、水系か有機溶剤系か、ろ過や処理の温度(常温・温水・蒸気環境等)、ろ過液の粘度(ろ過方式検討を含む)、気体か液体か(気体は主にMF領域)、ろ過のターゲット(粒子除去、除菌など)により、そのろ過材料を選択することになります。

NF・RO領域で用いられる材料

NF・RO領域では、分離の決め手となる機能は分離機能層にもたせて、膜自体は複合膜が主流です。複合膜の基材としては、PSFやPESの相分離膜は不織布などが用いられ、一部セラミックス基材もあるようです。また、セルロース系膜(酢酸セルロースなど)は、多孔膜構造の表面に比較的緻密な層を形成した一体型の材料があります。

これらNF・RO領域の用途は、分離機能層の性能と、NF領域では耐溶剤性が要求される場合があります。また、これらの膜は、その用途適性・分離性能の他、高透水性や、長期で使用する場合には塩素耐性や耐汚染性などが求められる場合があります。

ろ過用多孔膜の素材系統による用途適性

ろ過用材料の素材系統として、有機材料、金属系、セラミック系などがありますが、これらの材料の使い分けについては、まずは有機材料系が主流と思われます。有機材料系のろ材の選択検討では、ろ過対象が水系か有機溶剤系か、工業・食品・医療用か、また温度や粘度領域などが選択のポイントになります。金属系のろ材は、高粘度領域に使われることが多くなります。セラミック系は金属に腐食性などある液体のろ過が対象になってくると思います。

材料系統主な強み主な弱み適する条件
有機樹脂系軽量、膜量産性、加工しやすい、大面積化しやすい高温、強溶媒、強酸化剤、高差圧に制約常温付近の水、食品、飲料、製薬、一般薬液
金属系高強度、高耐圧、高温対応、溶接加工、洗浄再生が可能重い、腐食の可能性、初期費用が高い高温、高圧、粘性液、触媒・固形物回収
セラミック系耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、強力な洗浄が可能脆い、重い、初期費用が高い、シール設計が難しい強酸・強アルカリ、高温、研磨性粒子、高汚濁液

まとめ

ろ過用途の多孔膜材料の素材は、まずはろ過性能やその用途適性で選ぶことになりますが、有機溶剤系や、高粘度、高腐食性液などは金属・セラミックス系なども視野に入ってきます。MF・UF領域では様々な孔形成方法の有機系多孔膜があり、その用途や目的により選択することができます。ろ過用多孔膜の素材・材料の理解・選定指標としてご参考になればと思います。

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