日本の自動車産業の2000年以降はハイブリッド車の拡大になります(第4期:2000~2015)。ハイブリッド車は機械と電動の複合的な装置と言えますが、自動車産業の機械的な技術と日本国内の電機産業のインバーター、モーター等の技術リソース、そして、駆動用電池やエネルギーマネジメントの技術開発、により開発・実用化が進みました。これらの技術要素は、日本国内にリソースが多く、また、トヨタ・ホンダ・日産などの開発競争環境もあり、ハイブリッド車の領域は相対的に日本の自動車産業に強みのある領域になりました。ただし、社会環境は省エネルギーからCO2排出量削減にシフトしており、内燃機関を有するハイブリッド車の限界にもなったと思われます。
2015年から現在までの第5期はCASEとEVシフトの時代になります。CASE(Connected,Autonomous,Shared & Service,Electric)は、2016年にダイムラーがモビリティ戦略として示した4つの潮流の頭文字です。これは、動力や安全装置などの個別要素による技術から、環境対応、デジタル化、自動運転、利用形態の変化を同時に行い、競争単位を「一台の車」から「移動システム全体」へ広げる概念です。また、EVシフトは2015年のパリ協定をきっかけに、2020年前後の欧州の規制強化、テスラのEVとCASE統合商品の開発、中国の国内新エネルギー車規制によるEVと電池産業育成、などが影響しています。
一方、このCASE・EVシフトは、日本の自動車産業にとっては、電池、半導体、ソフトウェア、データ、エネルギー、サービスを含む新しい産業構造への転換を迫られた時代です。これらの産業構造は、日本の自動車産業が築いた統合型ものづくりの優位性が相対化され、他の産業や企業とのオープンソースが求められる環境にシフトしてきます。また、ハイブリッド車で先行していたことは、テスラや中国のEV・CASEへの集中に対してリソースの分散が生じた可能もあるのではないでしょうか。
そして、第6期は現在(2026)から未来に向けてです。この時代はSDV化とエネルギーマネジメントがキーワードになっています。SDV(Software Defined Vehicle)化は、ハードウェアとソフトウェアを分離し、車両の機能や性能をソフトウェアによって実現し、購入後もOTAで継続的に更新・拡張できる車両および開発・運用体制へ移行することを指します。SDVの構成要素としては、車載OS、ECU(Electronic Control Unit)とSoC(System on a Chip)、E/Eアーキテクチャー、センサー・アクチュエーター、車載ネットワークとコネクティビティー、OTA、そして車両からの情報を収集・分析するクラウドシステム、Software Factoryなどがあります。エネルギーマネジメントは、車両のエネルギーマネジメントと、充電インフラ、住宅・建物、再生可能エネルギー、電力系統、電力市場へ広がるV2G、VGI(Vehicle-Grid Integration)の領域があります。
このような領域になると、自動車産業は何を競争力の源泉とするか、また顧客は何を自動車の選択価値にするか、ということが課題になってくると思います。SDVのシステム優位性や電池・電力マネジメントとしての使いやすさでしょうか。それとも、自動車としての乗る楽しさや、自動車メーカーのブランドイメージでしょうか。
| 第4期 2000~2015 | 第5期 2015~2026 | 第6期 2026以降 | |
| 時代 | ハイブリッド化 | CASEとEVシフトの時代 | SDV(Software Defined Vehicle)化 EVからエネルギーマネジメントへ |
| イベント | プリウス以降の ハイブリッド車拡大 | CASE化の進展 世界的なEV推進 | What’s Next? |
| 産業形態 主な収益源 | 機械・電動の複合化産業 ソフトウェアとサービス | モビリテイと電子情報の統合化産業 データ・電力・継続課金型サービス | エネルギー・IT・モビリティ統合産業 モビリティシステムとサービスの提供 |
| Political | 地球温暖化対策 ・CO2排出量削減政策 燃費規制の強化 次世代自動車への補助制度や税制優遇 | 脱炭素化政策・EV普及政策 自動運転に関する法律や制度の整備 データ保護とサイバーセキュリテイ規制 都市交通政策の見直し | カーボンニュートラル政策・再生可能エネルギー導入拡大 EV充電インフラ政策・電力市場制度見直し ソフトウェア更新認証制度・サイバーセキュリテイ規制 自動運転に関する責任範囲の整備 |
| Economical | 原油価格変動への不安 ハイブリッド車市場の形成 電池や電子部品市場拡大 自動車メーカーと電機メーカーの関係強化 | 世界的なEV市場拡大 IT・半導体企業の自動車産業参入 車両販売以外の収益モデル模索 ソフトウエア、データ、サービス市場の成長 シェアリングやサブスクリプションの登場 | 車載電池と半導体投資拡大 電力取引や蓄電サービス事業化 自動車,電力,IT,通信企業の競争と協業 車両販売後も収益を得る継続課金モデル ソフトウェア機能販売・サプライチェーンの再編 |
| Social | 地球温暖化への関心 環境配慮型商品への支持 燃料費削減への期待 環境性能を企業や個人の選択基準とする考え方 | 少子高齢化、運転手不足 都市部の交通混雑・移動困難者への対応 所有から利用への価値観の変化 デジタルサービスへの期待 | カーボンニュートラル対応 労働力不足・高齢者や地方住民の移動手段確保 エネルギー安定供給・災害時の電力確保 データ利用の期待とプライバシーへの懸念 |
| Technological | 駆動用電池、インバータ- モーター、回生ブレーキ エネルギーマネジメント パワーエレクトロニクス | リチウムイオン電池、AI化 センサー、高速通信、クラウド、OTA(Over-The-Air:無線通信によるデータ送受信・更新) 自動運転、コネクテッド技術 | SDV技術,OTA,V2H・V2G(Vehicle to Home/Grid) クラウド連携,サイバーセキュリテイ エネルギーマネジメント化 車載電池,車載半導体,AI,車載ソフトウェア |
| 価値源泉:商品 能力 | CO2排出削減 電力制御:パワーエレクトロニクスシステム化 | 電子化モビリティ化⇒運転価値の変化 情報制御:モビリティ環境での体験価値創造 | 移動手段+蓄電池+通信端末 エネルギー・情報、及び体験価値マネジメント |

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