フィルム材料における接着と密着の使い分け
フィルム材料における「接着」という言葉は、概念的には「密着」(塗膜等が基材にしっかり引っ付いているか)と近しいですが、技術開発の現場では区別して使っている印象があります。
対象となる材料は、「接着」では異なるフィルム材料同士や、フィルム材料と他の基材、といったケースが多く、一方、「密着」はフィルム材料上の塗工層等が多い印象です。このため、フィルム材料開発の技術者的な視点からは、「密着」はフィルム材料の一部として開発、一方「接着」フィルム材料を使いこなす際の技術、という認識と思われます。
また、「接着」の場合は基本的には接着剤を使用し、この接着剤は多くの場合液状材料で、貼り合わせの際滴下等で付与することが多いです。一方で「密着」の場合は、表面処理で対応することが多く、材料として下塗り・プライマー等を用いることはありますが、これらは塗工技術でフィルムに付与することが多くなります。
一方で、「接着」の評価方法は、フィルム同士やフィルムと基材がしっかり引っ付いているか/はがれるか、ということを評価することになり、基本的に「密着」の評価方法と同様になります。
| 項目 | 接着 | 密着 |
| 対象材料 | 異なるフィルム材料同士、フィルム材料と基材を貼り合わせる等 | フィルム材料の塗工層 等 |
| 材料技術 | 接着剤を使用 (液体状が多い) | 表面処理技術が多い。 下塗りやプライマー材料の使用する場合あり。 |
| 付与プロセス技術 | 基本的に貼り合わせ時に、その貼合面に滴下等で付与 | 下塗り塗工などの塗工技術 |
| 評価方法 | 基本的に密着評価の手法と類似 | クロスカット・テープはくり はくり力 スクラッチ試験 曲げ試験 など |
フィルム材料の接着技術の活用例
フィルム材料における接着技術の活用例としては、よく知られているのは光学用途で用いられる偏光板の偏光子と保護フィルムの接着です。
偏光板の偏光子は、多くは親水性のポリマーであるポリビニルアルコール(PVA)を配向して加工されます。このPVAは親水性のため、水や湿度の影響で配向性が低下する等の劣化が起こるため、その偏光子の両面を疎水的な保護フィルムでカバーして、実用できる偏光板として一般に用いられます。この際に、異種のフィルム材料を接着することが必要になります。
この偏光子と保護フィルムの接着技術としては、保護フィルム材料としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの表面をアルカリ処理(けん化処理)して親水化し、親水性PVAとけん化したTAC表面を親水性の接着剤(PVA等)で接着する方法が一般的に知られています。また、最近では、接着剤としてUV等で硬化可能な材料を使用し、偏光子のPVAと疎水性の保護フィルムをUV接着剤の硬化により接着する技術も実用されています。
その他、フィルム材料を接着するようなケースとしては、電子材料で基板にフィルムを接着する、医療用材料でフィルム材料を他の材料と接着する、というようなケースが想定されますが、これらは各々の用途毎に材料や用途の秘匿性があること、接着剤への要求など異なる等の理由で、あまり情報が把握しづらいと思われます。
まとめ
フィルム材料の接着は、概念的には密着に近いですが、あまりフィルム材料メーカー視点の知見が少ない領域です。技術的には、接着剤の設計と基材との相性といった、各々の用途領域での個別の材料検討がポイントとなる技術領域と思われます。
フィルム材料の接着の技術検討に関して、今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。
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