1.その他、高耐熱・耐久、軟質、生分解性のフィルム材料
フィルムとして、これまでにご紹介した材料以外にも、様々な高分子化合物のフィルム材料があります。ここでは、物性や用途として特徴のある、フッ素系フィルム、柔軟性フィルム、生分解性フィルムをご紹介します。
- フッ素系フィルム:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、FEP(フルオロエチレンプロピレン)等
- 柔軟性フィルム:PU(ポリウレタン)、TPE(熱可塑性エラストマー)
- 生分解性フィルム:PLA(ポリ乳酸)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)
| フッ素系フィルム PTFE、ETFE、PFA、FEP等 | 柔軟性フィルム PU、TPE | 生分解性フィルム PLA、PBS、 PBAT | |
| 特徴 | 耐熱性、耐候性 疎水・疎油性 | 柔軟性 | 環境適性(生分解性) |
| メーカー | AGC、ダイキン Chemours(旧DuPont) | PU:コベストロ・BASF TPE:クラレ等 | 三菱ケミカル 昭和電工 海外メーカー |
| 用途 | 農業・建材、離形、 電気絶縁、耐薬品 等 | 防水衣料・建材 医療・衛生材料 等 | 包装フィルム 農業マルチ |
2.フッ素系フィルムについて
フッ素系フィルムとしては、テフロンTMでよく知られているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)がありますが、材料としては加工性、透明性に劣るため、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、FEP(フルオロエチレンプロピレン)等、フィルム加工性や透明性等の良好な材料がフィルムとしては使用領域が広いです。
フッ素系フィルムの特徴は、耐熱性、耐薬品性、疎水性(疎油性・非粘着性)が共通する特性です。また、PFA、FEP、ETFEは、PTFEの加工のしにくさ(溶融成型できない)を改善し、フィルム加工をしやすくなっています。また、ETFEは透明性が高いことが特徴です。機械特性としては、FEPは柔軟、ETFEは硬めで高強度です。
フッ素系フィルムの中で用途・数量が多いのはETFEです。農業用のフィルムではAGCのエフクリーン®や建材用ではアフレックス®として使用の実績があります。また、非粘着性のため離形フィルムとしてETFEやPTFE、電気絶縁被覆としてPFAやFEP、また化学薬品用途でPFA等などが挙げられます。
フッ素系フィルムのリスクとしては、環境適性でしょうか。使用後フィルムの自然環境での分解性が低い、フッ素による焼却時の設備ダメージ(高温設備では焼却可能)、最近では欧州でのPFAS規制の拡大可能性、等があります。また、価格面でも高く、高耐久や高付加価値で用途的なメリットがあるかが選択のポイントになります。
3.柔軟性フィルムについて
柔軟性のあるフィルムとしては、PU(ポリウレタン)やTPE(熱可塑性エラストマー)のフィルムがあります。いずれもゴムのような特性を持ち、熱で可塑化するため、溶融製膜などでフィルムを作成することができます。
PUフィルムは、柔軟性と伸びやすさの特徴に加え、耐摩耗性や引き裂き強度といった、物理的な耐久性があることが特徴です。一方で、耐熱性、耐加水分解性、耐候性は若干劣ります。透明性の高いグレードもあります。材料メーカーとしてはコベストロ、BASF、三井化学等が挙げられます。
TPE(熱可塑性エラストマー)は、熱可塑性のプラスチックとゴム弾性を有する材料の総称で、スチレン系(TPS)、オレフィン系(TPO)、ポリエステル系(TPEE)などがあります。スチレン系、オレフィン系は、TPUに比べ耐加水分解性が高い、また低溶出物という特徴のある製品もあります。材料メーカーとしては、クラレや旭化成、三井化学、海外メーカーではKratonなどがあります。
PUフィルムの主な用途は、衣料(スポーツやアウトドアの防水等)、医療用(創傷被覆材など)、また、自動車内装用などがあります。これらは、柔軟性とともに耐摩耗性などが評価される用途です。TPEは、医療用途、食品・包装用途、農業の被覆用途などが挙げられます。柔軟で破れにくいことに加え、低溶出であることや、低コスであることがフィルムの用途としてのポイントです。
4.生分解性フィルムについて
生分解性フィルムとしては、PLA(ポリ乳酸)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)などがあります。PLAは植物由来材料でかつコンポストでの生分解性ありとされています。PBSは石油系/バイオ系由来の材料があり生分解性ありとされています。PBATは石油由来材料の比率が高めです。
PLAは比較的硬い特性の材料です。PBSやPBATは柔軟な特性を持つ材料です。これらの特徴により、用いられる用途の違いがあります。また、「生分解性」については、各メーカーによる評価を参照する必要がありますが、コンポストでの分解か、土中での分解か、また、海水での分解の試験条件などもあり、実際の生分解性はその環境により変わるものという認識が必要です。
| 材料 | フィルム特徴 | 主用途 |
|---|---|---|
| PLA | 高剛性・高透明・脆め | 食品包装 |
| PBS | 柔軟・耐水・農業向け | マルチ・包装 |
| PBAT | ゴム的柔軟性 | 袋・被覆 |
生分解性フィルムは、基本的に大量に使用し、屋外環境に残る食品包装や農業用マルチなどで用途が検討されるのが主と思われます。
5.フッ素フィルム、柔軟フィルム、生分解性フィルム、その他フィルムの選定する際のポイント
フッ素フィルム、柔軟フィルム、生分解性フィルム等は、その材料としての特性・機能を生かした用途で用いられるフィルムです。汎用のフィルムに比べると高コストにはなりますが、その特性が必要な用途でこれらの材料を選ぶことになります。
フッ素フィルムはその耐久性、化学的安定性等を活用できる用途に用いられます。例えば、汎用的な農業や建材用途では10年以上の耐久性等が期待されています。
柔軟性フィルムは、衣服や自動車内装の柔軟な特性が必要な用途、また医療や食品包装など、破れやさまざまな形状を包む用途で、その柔軟性を活用しながら、その他の加水分解性や低溶出性などを見て用途に合わせたフィルムを検討することになるのではないでしょうか。
生分解性フィルムは、基本的に使い捨てで屋外環境に放置される可能性のある用途が主になります。材料の選択肢は限られますが、その中で機械物性としてブレンドや積層なども考慮しながら、コストも含めた選択肢を検討することになると思います。
また、これ以外にもその材料の特徴を活かしたフィルム、用途の要求に合わせたフィルムなどを選択できる可能性はあります。
フィルムの選定の際には、用途や要求事項などの検討に今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。
問い合わせ・アンケート
S&A開発支援ラボではビジネスや開発でのお困りごとについてアンケートをお願いしております。


コメント