多孔膜の構造の分類
多孔膜・多孔質膜では、膜内に空隙のある多孔構造(孔・空隙・ネットワーク等)が特徴ですが、この構造はいくつかに分類ができ、その構造的な特徴が多孔膜に求められる性質や用途の特徴につながっています。今回は、多孔膜の構造と機能をまとめたいと思います。
多孔膜構造としては、まずは孔を形成するための骨格構造で分類できます。この骨格構造は、その多孔膜をどのような方法で形成するか、という製膜方法と関連してきます。また、孔の構造に着目すると、その孔が開気孔か閉気孔か、という連結性や、それぞれの孔の形状の分類があります。また、厚み方向の孔径変化に着目した対称・非対称膜、孔の規則性に着目した分類などもあります。また、多孔質膜のそれぞれの構造により適した用途が生じてきます。
| 構造分類軸 | 構造の例 |
| 骨格構造 | 連続層(スポンジ)、繊維ネットワーク、粒子充填・焼結、規則配列、etc |
| 孔の連結性 | 開気孔(三次元網目状連通、一方向貫通型)、閉気孔、etc |
| 孔形状 | 円筒孔、円錐孔、スリット孔、粒子間隙孔、繊維間隙孔、スポンジ状孔、フィンガー状孔、etc |
| 膜厚方向 | 対称膜、非対称膜、傾斜孔径膜、複合膜、etc |
| 規則性 | ランダム構造、規則構造、etc |
多孔膜の骨格構造について
多孔膜の骨格構造は、その多孔膜がどのように形成されるかと密接な関係があります。
骨格が連続層で形成される多孔膜は、主に相分離プロセスによって構造が形成されます。このような膜は連続層により比較的膜強度が高いこと、相分離プロセスで孔径が比較的そろい易いこと、小孔径化ができることなどの特徴から、分離性能の高いろ過膜用途に使われます。一方、ろ過用途においてろ過時の液流量は低く、圧力損失は高くなる傾向があり、非対称膜やフィンガー状孔の形成なども活用されます。
繊維ネットワーク状の骨格構造は布織物の他、不織布、電解防止や、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)延伸によるNode-Fibril構造があります。この構造の特徴として、膜の空隙率が高く、ろ過流量は大きいですが、ろ過の分離精度は低めで、ろ過用途では粗ろ過、もしくは気体ろ過などの用途が多いです。
粒子充填・焼結構造は、陶器・セラミックス膜のような多孔膜の構造ですが、基本的に無機粒子を充填して焼結などにより粒子間接着を図って形成されます。高温や薬品に対する耐久性を付与したろ過材料や、触媒などの無機粒子の表面機能を活用する材料に活用されます。
規則配列膜は、トラックエッチ膜といった均一な孔径の貫通孔を形成する膜や、Anodic Aluminum Oxide(AAO)膜といったアルミニウムの陽極酸化膜があります。これら膜の用途は、細胞分離や分析などの、均一な孔径が必要な特殊用途への活用がされています。

多孔膜の孔構造について
多孔膜の孔構造については、その孔同士の連結性に着目した開気孔と閉気孔の分類があります。
開気孔とは、基本的にその孔同士が連通していて基本的に膜の厚み方向に気体(流体)が通過することができます。なお、開気孔にはトラックエッチ膜のような貫通孔の場合もあります。一方、閉気孔は孔同士の連通が無く(少なく)、膜の厚み方向で気体が通過できない構造です。このような閉気構造は、膜中での発泡による多孔膜の形成や空隙粒子による多孔膜などで形成されます。
基本的にはろ過膜は開気孔の膜になります。閉気孔の多孔膜の用途は、発泡体として断熱・軽量化等の用途に用いられます。

多孔膜の孔構造としては形成されている孔の形状による分類もあります。加工法により孔形状が定義しやすいのが、トラックエッチによる円筒状や円錐状です。スリット状孔は、PTFE延伸膜などに形成されます。粒子間隙孔、繊維間隙孔、スポンジ状孔、は形状的な定義ではなく、多孔膜形成法によって示される孔構造です。フィンガー状孔は、相分離膜で形成される「マクロボイド」による大きな孔構造です。これらの孔形状は、上記の骨格構造との関連で機能を解釈する際に考慮することが多いように思います。
多孔膜のその他構造要素
多孔膜の構造としてその膜厚方向の孔径や構造に着目した、対称膜、非対称膜、傾斜孔径膜、複合膜、等の分類があります。対称膜は表面から厚み内部において孔径が変化しない膜です。非対称膜は表面と厚み内部の孔径が変わる膜で、表面緻密層のある膜や傾斜孔径膜、フィンガー構造を有する膜などろ過膜等で多くのバリエーションがあります。複合膜は、いくつかの多孔膜、多孔膜・緻密膜を厚み方向に複合化した膜で、コーティング膜、TFC膜(Thin Film Composite Membrane)などがあります。多孔膜の厚み方向の構造設計は、膜用途の実用化の際に様々な技術検討が行われます。
また、多孔膜のランダム構造、規則構造、の分類は、多孔膜形成法との関わりが強く、相分離、繊維、粒子による方法はランダム、トラックエッチ・AAOなどの方法は規則性になります。多孔膜の用途的には、規則構造は特殊用途、ランダム構造は工業用途といった分類になるでしょうか。
まとめ
多孔膜の構造は、その多孔膜形成法との関係性が強いです。基本的には、骨格構造から、スポンジ状-相分離、繊維ネットワーク状-繊維、粒子充填・焼成-無機粒子、その他規則性のあるトラックエッチ等、で構造・用途が分類され、一部発泡体による閉気構造などもあります。一方で、多孔膜の機能化には、孔径や孔形状・開気構造、膜厚方向の構造が重要な要素になってきます。
多孔膜・多孔質膜材料の構造に関して、今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。
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