ろ過用途の多孔膜:ろ過の孔径と方式

材料技術

多孔膜の孔径によるろ過技術の分類とろ過対象

多孔膜の孔径が小さくなると、ろ過は液体中のごみ・異物を除去するなどの目的から、分離除去する対象がより小さく、より精度よく分離することが目的となってきました。このため、多孔膜の孔径やろ過対象の大きさによって、精密ろ過(MF)、限外ろ過(UF)、ナノろ過(NF)、逆浸透(RO)、といったろ過方式の分類がされています。

これらろ過方式の分類は、基本的に孔径かMWCO(Molecular Weight Cut-Off:分画分子量)という分離対象の大きさによって分けられます。MWCOは膜が標準物質(PEG、デキストラン等)の約90%を阻止する分子量を示す指標で、主にUF膜およびNF膜の分離性能評価に用いられます。MWCOはDa(ダルトン)やkDaという単位で表され、1kDaは分子量1000相当になります。

孔径0.1μm程度までは、ろ過対象を粒子状形態として定義・評価可能ですが、0.1μm(100nm)以下の限外ろ過(UF)になると、タンパク質などの分子オーダーとなり、MWCOで定義・評価することが必要になってきます。また、ナノろ過(NF)の領域になると、多孔膜の孔による分離と多価イオンなどの電荷物質の分離の両方の機構が見られます。逆浸透(RO)は緻密膜(半透膜)における拡散透過による分離方式となってきます。これら、ろ過方式の違いにより、ろ過対象、ろ過精度、実際にろ過を行う工程の条件設計や方式が変わってきます。

分類分離指標分離性能の目安主な除去対象
粗ろ過(Strainer)孔径>10 μm砂、スケール、繊維
精密ろ過(MF)孔径0.05~10 μm菌体、酵母、懸濁粒子
限外ろ過(UF)孔径またはMWCO1~100 nm程度
MWCO:1~1000 kDa
タンパク質、コロイド、
ウイルス
ナノろ過(NF)MWCO主体(0.5~2 nm)
MWCO:100~1000 Da
低分子有機物、多価イオン
逆浸透(RO)塩阻止率主体(0.5nm以下)
MWCO:<100 Da相当
塩類、イオン、超低分子物質

粗ろ過、MF領域

歴史的に古くからある多孔質膜での濾過は、粗ろ過に相当します。このろ過領域は基本的にごみや異物を除くろ過であり、ろ過液の異物除去やろ過工程の設備保護(異物によるポンプ故障防止など)が目的になります。これら粗ろ過では、例えば飲料水ろ過では砂地などでろ過を行いますが細菌などは残るので塩素処理を行いますし、酒類のろ過では酵母や細菌などが残るので火入れなどの殺菌処理が必要になります。

孔径を小さく制御した多孔膜は、精密ろ過(MF:Microfiltration)の用途に用いられます。精密ろ過膜(MF膜)は、JIS(K3802)の定義に沿うと、0.05 μm~数 μm程度の微粒子及び微生物をろ過によって分離するためのもので、分離特性を孔径で表す膜になります。粗ろ過とMF膜の違いは、粗ろ過は主として異物除去や設備保護を目的としたろ過であるのに対し、MF膜は微粒子や微生物の品質保証や分離精製のための分離精度の実現が目的になります。

MF膜のろ過機構としては、孔径によるサイズ排除(ふるい分け)を利用して微粒子や微生物を分離します。このような膜として、相分離膜、延伸膜、トラックエッチ膜、不織布があり、用途により使い分けられています。

MF膜の用いられる用途としては、ビール・ワイン・飲料水などの除菌ろ過、医薬用水の除菌ろ過、半導体プロセス用の水(洗浄水等)の異物除去ろ過などが挙げられます。また、上水の浄水処理、下水の排水処理、化学系の薬液ろ過、無菌ベントのエアフィルター等の用途があります。

以上のようなMF膜用途のろ過工程は、液体などを大量に連続・長期間でろ過処理する必要があるので、フィルター性能としてろ過処理流量やろ過圧力、ろ過寿命などが重視されます。また、除菌用途では高い除菌性能、半導体用途では高い異物除去性能が求められ、孔径分布やろ過精度の高い相分離膜が主に用いられます。

UF領域

限外ろ過(UF:Ultrafiltration)とMFとの違いは、その分離対象になります。MFでは分離対象が微粒子・微生物であるのに対し。UFでは高分子・コロイドになります。ろ過機構はどちらも孔径によるサイズ排除(ふるい分け)でMF膜より孔径が小さい領域がUF膜に用いられます。このため、MF膜とUF膜を区別するポイントは、JIS(K3802)の定義から見ると分離性能がMWCOで定義されているかどうかになってきます。

UF膜の分離対象は、概ね1~100 nm程度の高分子、タンパク質、コロイド、ウイルスになります。分離性能は主としてMWCO(1~1000 kDa程度)で表されます。代表的には、タンパク質(数十~数百kDa)、コロイド(10~1000 nm)、ウイルス(20~300 nm)が挙げられますが、コロイドやウイルスは大きさを粒径で示す場合もあります。UFの用いられる主な用途は、バイオ医薬、食品、水処理等の用途になります。

また、ろ過の方式として、MF膜ろ過はデッドエンド方式(ろ過液を膜に通過させる)が多く、UF膜ろ過はクロスフロー式(膜の両側に液を流し液成分のみを下流に流す)が多いことも特徴です。このため、UF膜のろ過はろ過液の濃縮が可能になります。

NF・RO領域

ナノろ過(NF:Nanofiltration)膜、および逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜はいずれも基本的にはポリアミド薄膜複合膜(TFC)の構成です。MF膜およびUF膜は主として多孔膜によるサイズ排除(ふるい分け)で分離を行いますが、NF膜、RO膜は、分子の溶解・拡散および膜の選択透過性に基づいて分離を行います。

NF膜ととRO膜の違いは、ポリアミド薄膜複合膜(TFC)と呼ばれる膜構造で分離機能を持つポリアミド層の透過性の違いによります。NF膜はポリアミド層の分子設計や厚みなどにより低分子有機物や多価イオンの選択的除去を目的とするのに対し、RO膜は一価イオンを含む塩類まで除去し、水のみを透過させる点で分離対象および分離性能が異なります。

RO膜は「水以外を極力除去して高純度の水を得る膜」で、海水淡水化、半導体や医療用の超純水作成などの用途があります。一方、NF膜は「必要な成分をある程度残しながら選択的に分離する膜」であり、用途としては、水の軟水化、飲料水の農薬等の除去、食品プロセスの減塩(糖は残す)、色素回収などの用途があります。NF膜は、RO膜技術を基盤とした選択分離膜で、超純水製造のような完全脱塩ではなく、有機物や多価イオンのみを選択的に除去したい用途に対応するために開発され、飲料水処理におけるミネラル保持、省エネルギー化、および食品・化学分野における選択的成分分離のニーズに沿った膜、という理解ができると思います。

まとめ

ろ過用途の多孔膜材料として、孔径・分離対象の違いから、粗ろ過、MF、UF、NF/ROという分離膜領域が見出されました。それぞれの分離方式、孔径・MWCO領域、ろ過工程の条件や方式、適用用途について以下にまとめましたので、ご参考ください。

項目MF(Microfiltration)UF(Ultrafiltration)NF(Nanofiltration)RO(Reverse Osmosis)
日本語精密ろ過限外ろ過ナノろ過逆浸透
主な分離対象懸濁粒子、細菌、酵母タンパク質、コロイド、ウイルス有機低分子、多価イオン、色素塩類、イオン、低分子有機物
孔径目安0.1~10 μm1~100 nm0.5~2 nm程度実質的な孔なし
MWCO目安通常規定しない1~1000 kDa100~1000 Da<100 Da相当
ろ過精度の表現孔径、Absolute、NominalMWCOMWCO、塩阻止率塩阻止率
代表圧力(膜間差圧:TMP)0.01~2 bar0.1~5 bar5~30 bar10~80 bar
代表流束(Flux)L/m2/Hr:LMH100~500 LMH50~300 LMH10~50 LMH10~30 LMH
主なろ過メカニズムサイズ排除
(ふるい分け)
サイズ排除
(ふるい分け)
サイズ排除+電荷排除(Donnan効果)溶解拡散(Solution-Diffusion)
塩類(NaCl)の除去××
多価イオン(Ca²⁺、Mg²⁺)除去××
タンパク質除去×
細菌除去
ウイルス除去
主な運転方式デッドエンド、クロスフロークロスフロー主体クロスフロークロスフロー
主な用途除菌ろ過、清澄化、前処理タンパク濃縮、浄水処理軟水化、色素回収、有機物除去超純水、海水淡水化、医薬用水

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