多孔膜の利用される特性・用途

材料技術

多孔膜の特徴的な性質と代表的な用途

多孔膜・多孔質膜は、その膜に多孔構造(孔・空隙・ネットワーク等)があります。この構造的な特徴が、多孔膜として利用する性質や用途につながっています。また、膜に用いられる樹脂などの材料は、多孔膜として求められる性質というよりも、その多孔膜用途における材料強度、表面の化学的性質、耐熱性・化学的安定性、といった多孔膜が使用される用途での副次的な特性を付与するために選択される傾向にあります。

多孔膜材料について、その利用する性質と活用する代表用途を以下にまとめました。多孔膜の代表的な機能であるろ過用途は、「透過性の選択性」という概念からさまざまな用途に広がっています。また、多孔膜の孔構造は、「比表面積」、「毛細管現象」、「担持・保持構造」という性質につながってきます。その他、多孔膜の「気体内包」、布のような「繊維・織り構造」、孔の光散乱等による光学特性の活用などもされています。

利用する性質  代表用途
透過性の選択性濾過、透湿防水、ガス分離、電池セパレータ
比表面積吸着、触媒、センサー、蓄電
毛細管現象紙、衛生材料、含油軸受
担持・保持構造生体材料、接着基材、印刷媒体
気体内包断熱、軽量構造、緩衝、吸音
繊維・織り構造衣料、不織布フィルター
光散乱光拡散フィルム、半透過膜、反射防止膜

多孔膜の透過選択性を活用する用途

多孔膜材料が歴史的に活用されてきたろ過の用途は、液体と固体状の物質を膜を通すことで分離する、ということから膜の「透過の選択性」を利用しているとも言えます。この透過の選択性を多孔膜の孔径の調整により行うと、精密濾過(MF)・限外濾過(UF)・ナノ濾過(NF)・逆浸透(RO)という選択的な分離を行う技術になります。

また、水をはじいて水蒸気を通す膜(ゴアテックス™など)は、液体と気体の透過選択性を利用しています。ある種のガスは通し、他のガスは通さないガス分離膜(緻密膜の領域も含みます)なども選択透過性を活用しています。

また、電池の用途では、電解質や水等の透過の選択性を活用した電池セパレータが用いられます。このように、分離技術から、選択分離、選択透過、という性質を活用するのがこれらの用途です。

多孔膜の孔構造を活用する用途

多孔膜材料は、その多孔構造(孔・空隙・ネットワーク等)が特徴になります。多孔膜のこの多孔構造による性質として、比表面積が大きい、毛細管現象が起きやすい、さまざまな材料の担持や保持が可能、という特徴があります。

多孔膜の多孔構造を表現する指標としては、比表面積、孔径(分布)、空隙率などがあります。これらの指標の内、比表面積は膜の表面と膜内部の多孔構造から形成される表面積の単位質量(もしくは体積)に対する比率です。これは、例えば緻密膜と多孔膜で同じ膜質量や体積(面積)だった場合、多孔膜では膜の表面以外に内部の多孔構造により膜内部に広い表面積がある、ということになります。この比表面積が大きいことは、吸着、触媒、センサーなどへの活用に望ましい特徴になります。また、最近は電極・蓄電用途などでの適用も検討されています。

また、多孔膜の多孔構造により、液体の毛細管現象が生じる場合があります。具体例としては、紙の上に墨汁やインキで字や画を書くとき、すばやく液がしみ込んだり広がったりすることに毛細管現象が寄与しています。毛細管現象は、多孔構造の特徴と材料と液体の表面相互作用が影響します。これら特徴は、さまざまな紙、衛生材料、含油軸受けなどに活用されています。
多孔構造を担持・保持構造体として活用する場合もあります。担持・保持のメカニズムとしては、比表面積や毛細管現象などもありますが、例えば生体用途では創傷被覆材や人口皮膚、また細胞培養の足場材など、多孔構造・膜を構造体として使用します。その他、粘着・接着基材として多孔膜を使う場合(粘着性向上やクッション性活用など)、印刷用途(感熱紙、転写用など)などがあります。

多孔膜のその他の用途

その他の多孔膜特性を活用する性質としては、気体内包による断熱、軽量化、緩衝、防音などがあります。これらの用途では、孔構造以外に発泡材のような泡構造なども活用が可能です。

また、歴史的な多孔材料の用途である布、すなわち繊維・織り構造を活用する用途があります。この用途には、衣料以外に不織布の用途、また繊維構造の樹脂含侵による補強の用途などもあると思います。その他、多孔構造による光特性制御として、光散乱性の活用、また孔径が小さい場合は膜の屈折率を下げる効果による反射防止への活用などがあります。

まとめ

多孔膜材料の用途は、主にその多孔構造が活用される用途に拡がっています。ろ過用途の概念の延長から透過選択性を活用する用途、多孔構造による比表面積・毛細管現象等(紙などを含む)を活用する用途、その他気体含有や布の特徴を活用する用途など、幅広い用途活用の流れがあります。

また、多孔膜材料としての機能化のメインは多孔構造によるものですが、その活用される用途における強度、表面の性質、熱的・化学的安定性の観点から、さまざまな材料技術や多孔化技術が活用されています。

多孔膜・多孔質膜材料の特徴・用途に関して、今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。

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