ろ過用途の多孔膜:評価の指標

材料技術

ろ過用途の多孔膜の評価項目

ろ過用途の多孔膜を考える際には、その構造や性能を評価し判断する方法が必要になってきます。多孔膜の性能を決める要素を考えると、多孔膜を形成する材料と多孔膜の孔の構造に大別できますが、ろ過のような孔の機能を活用する時には孔構造やろ過性能による評価と判断が必要になってきます。

ろ過用途の多孔膜の評価の指標は、多孔膜の孔径・膜構造に関する指標、ろ過適性・ろ過寿命に関する指標、材料の機械特性や表面特性、耐久性、組成などに関わる一般物性、に大きく分類できます。それぞれの内容を見ていきたいと思います。

指標分類評価項目評価内容主な目的
孔径・膜構造孔径(Pore Size)等平均孔径、最大孔径、孔径分布等捕捉できる粒子径や分離対象の明確化
気孔率(Porosity)等膜中の空隙率透水性能や圧力損失との関係を評価する
膜厚多孔層・支持層の厚み透過性能と機械強度のバランスを把握
ろ過適性分離性能(Retention/Rejection)粒子、菌体、タンパク質、塩類の除去率目的物の除去・回収性能を確認する
粒子チャレンジ試験阻止効率(%)、β比、対数除去値(LRV)実際に粒子がどれだけ通過/捕捉されるか
透水量(Flux)単位面積当たりの透過流量ろ過能力や生産性を評価する
透過率(Permeability)圧力当たりの透過性能膜材料固有の性能を比較する
圧力損失膜通過前後の差圧エネルギー効率や目詰まり傾向を評価
ろ過寿命ファウリング耐性汚染物質による性能低下長期運転時の安定性を確認する
洗浄回復率洗浄後の透過流束回復率メンテナンス性を評価する
一般物性機械強度引張強度、破裂圧、圧縮強度使用条件での耐久性を確認する
耐薬品性酸、アルカリ、有機溶剤への耐性洗浄薬品やプロセス液への適合性を確認する
耐熱性使用温度範囲高温プロセスへの適用可否を評価する
親水性・疎水性接触角測定濡れ性やファウリング特性を評価する
表面粗さAFMなどによる表面観察汚染物質の付着しやすさを評価する
化学組成FT-IR、XPSなど膜表面改質や材料特性を確認する
膜構造観察SEM、TEM観察孔構造や欠陥の有無を確認する

多孔膜の孔径・膜構造に関わる指標

多孔膜の孔径や膜構造は、その多孔膜の形成方法により様々な形状・分布や空隙の密度が生じます。これを孔径とするには、基本的に円or球状の孔の仮定をおいてこれを液体の通過・圧入や気体吸着、もしくは直接観察から求めていくのが孔径になります。このための代表的な測定方法として、バブルポイント法、ポロメータ、ガス吸着法や、直接観察のSEM法などがあります。

また、多孔膜の孔径はその形成法に関連して孔径の分布が生じます。この中でろ過用途で重要なのは、最大孔径、平均孔径、孔径分布になります。最大孔径は、ろ過における阻止性能を示しろ過膜の絶対ろ過精度に対応する重要な指標で、バブルポイント法が主要な測定法です。平均孔径は、実用的な孔径を示しろ過膜の公称ろ過精度などにも用いられる指標です。孔径分布は、ある粒径以上は確実に阻止、それ未満は通過という分画性能(sharp cut-off)に関連する指標になります。

また、孔径以外の膜の構造パラメータとしては、気孔率、開孔率があります。また、孔を液体が通過する流路に関連する屈曲度という指標もあります。気孔率はろ過流量やろ過寿命に関連します(膜強度とのトレードオフがあります)。開孔率は閉気孔を除いた実効的なろ過性能に影響する指標です。屈曲度はろ過流速や深層ろ過効果(孔径より小さい粒子も補足される)に影響します。

これらの孔径・膜構造指標は、直接的なろ過性能ではありませんが、ろ過の性能と膜構造を対応づける意味で重要な指標になってきます。

指標定義代表的な測定方法
平均孔径 (mean pore size)孔径分布の代表値。数平均・体積平均・流量平均(mean flow pore size)などで定義され、どの平均を取るかで値が変わる・ポロメータ(キャピラリーフロー、水銀圧入法)
・ガス吸着法(BJH法によるBET比表面積・細孔容積解析)
・SEM画像の画像解析(円相当径の平均)
最大孔径 (maximum pore size)膜内に存在する孔のうち最も大きい孔の径。膜を貫通する最小の毛細管径として定義されることが多い・バブルポイント法(最初に気泡が発生する圧力=最大孔径に対応)
・SEM画像の最大孔の実測
孔径分布 (pore size distribution, PSD)孔径ごとの存在割合(頻度分布・累積分布)・ポロメータ(キャピラリーフロー、水銀圧入法)
・ガス吸着法(BJH/DFT法)
・画像解析(多数の孔を統計処理)
気孔率 (porosity, ε)膜全体の体積に対する空隙(気孔)体積の割合。ε = 空隙体積 / 全体積 × 100(%)・密度法(見かけ密度と真密度の比較:ε=1−ρ見かけ/ρ真)
・液体含侵法(全圧入体積/試料体積)
・ガスピクノメトリー(気体置換法)
開孔率 (open porosity / 表面開孔率)気孔のうち、膜表面に開口し外部と連通している孔(開気孔)の割合。全気孔率と区別され、閉気孔(独立孔)を含まない・SEM表面画像の解析(表面に見える孔の面積割合) ・開気孔体積法(液体含浸法・オープンポロシメトリー)
・気体透過量との相関から推定
屈曲度 (tortuosity, τ)孔を通る実際の透過経路長 Le と膜厚 L の比(τ = Le/L)。孔の曲がりくねり具合を表す指標・気体/液体透過係数と拡散係数から逆算(Le²/L²で評価)
・Kozeny-Carman式など経験式からの算出
・X線CTによる3次元再構成からの経路長解析

ろ過適性・ろ過寿命に関わる指標

ろ過用の多孔膜としての実用的な評価指標は、実際のろ過による評価になります。分離性能については、MFの場合は粒子や微生物、UF・NF・ROについてはタンパク質や塩類の除去率などがあります。MFでの食品や医療用途の微生物除去、また半導体における微粒子は絶対的なろ過精度が求められるケースも多くあります。また、ろ過性能を単分散粒子で評価するチャレンジ試験などが行われる場合もあります。

ろ過の実用的な評価は、透水量と通水時の圧力の評価になります。この評価は、膜単体で評価するケースと、カートリッジ上のろ過材で実工程相当の環境で評価するケースがあります。工業プロセス効率の点で透水量は重要で、圧力は設備設計とろ過寿命の観点でろ過圧力が重要になります。また、実用的観点でろ過材の寿命が重要視される場合もありますが、これには、実用的な系で評価・判断が必要になってきます。

ろ過用多孔膜のその他一般物性指標

ろ過用の多孔膜のその他の指標として機械強度や耐久性などがあります。ろ過の対象となる液は、水、飲料水や酒(ビール、ワインなど)、また強酸や強アルカリなどの薬液、有機溶剤の液などがあり、ろ過対象の液に耐久性のある材料の選定と評価が必要になります。また、特に水系の液を濾過する際に膜の親水性が要求されるため重要になってきます。膜の粗さや組成は、基本的な性能としての把握のための指標になります。

まとめ

ろ過用途の多孔膜材料は、ろ過性能と孔径・膜構造とを対応づけながら、評価・判断されます。また、ろ過用多孔膜の一般物性は、そもそも対象となるろ過用途に適用できる材料を選定する際に必要な指標になります。ろ過用多孔膜の物性指標の理解、適用時の選定指標についてご参考になればと思います。

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