紙と布の違いから多孔膜用途をみてみる
次に、紙の用途・機能と多孔膜・多孔質材料との関係を考えてみたいと思います。この紙の用途や機能を考える際に課題と感じたのは、「布」という材料と、「紙」という材料にどのような材料、機能の違いがあるか、ということです。
まず、材料としての定義を検討してみると、「布」は、”糸または繊維を織る、編む、絡ませるなどして形成した柔軟なシートで、織物、編物、不織布を含む”、「紙」は、”短繊維を水中分散し、抄紙・脱水・乾燥して形成した繊維集合シート”、とでもいうことができるでしょうか。いずれも繊維状材料を基本に、「布」は糸や長繊維を絡ませた材料、「布」は短繊維を集めた材料、というイメージです。この定義だと、不織布やナノファイバーなどは境界領域となるかと思います。
一方、「布」と「紙」は実用上の機能や、歴史的経緯から見て、その用途や用途に必要な機能としても違いがあると認識されると思います。その観点を抽出してみると、以下のような内容が挙げられると思います。実用的な機能面でいうと、「布」はその柔軟性や曲面追随性、さらには引張強度の強さなどに特徴があり、「紙」はその剛性や平面性、平滑性からの、印刷・筆記性などに特徴を感じるかと思います。
| 観点 | 紙が得意 | 布が得意 |
| 形態 | 平面を保持する | 曲面・身体に追従する |
| 変形 | 折り目を保持しやすい | 折っても戻りやすい |
| 面品質 | 平滑・均一にしやすい | 繊維・織目による凹凸がある |
| 印刷・筆記 | 高精細印刷、筆記 | 染色、柄、比較的粗い印刷 |
| 加工 | 切断、折り、罫線、打抜き | 縫製、編成、接着 |
| 使用形態 | 使い切り、交換、廃棄 | 反復使用、洗浄、耐久使用 |
| 力学特性 | 面内剛性、形状保持 | ドレープ性、屈曲性、伸縮性 |
| 多孔機能 | 吸液、毛細管移送、印刷、ろ過 | 通気、保温、着用、柔軟ろ過 |
紙の用途と多孔質材料の適用可能性
「紙」が現在用いられている用途領域から多孔膜の適用可能性をまとめてみました。紙の用途としては、これまで見てきたフィルターなどの他、その剛性等の特性から包装用途やラベル等の基材の用途がありこの領域では透過性調整・制御などの可能性があります。また、医療用やワイパー用などは液体の吸水性などの機能ニーズが考えられます。また、電気領域では絶縁紙や電池セパレータなど具体的に高機能多孔膜の検討が進んでいる領域があります。また、紙の面内での液体拡散性を利用したクロマト・分析用途では高分子多孔膜化の検討が行われています。
| 紙の用途・機能 | 現状材料の例 | 多孔膜の適用可能性 | 期待されるメリット |
| ろ紙・液体フィルター エアフィルター | セルロースろ紙 紙、不織布 | 精密ろ過膜 高性能多孔膜フィルター | 微細孔径制御、耐薬品性、ろ過精度 微粒子捕集、低圧損化 |
| 包装紙・食品包装 | クラフト紙、コート紙 | 通気・防湿・バリア膜との複合化 鮮度保持用選択透過 | 水蒸気・O₂、CO₂等の透過制御 |
| ラベル・粘着基材 | 紙 | 通気性基材・ベント | 内圧調整、軽量化 |
| 建材・透湿シート | 建築紙 | 防水透湿膜 | 雨水遮断+湿気排出 |
| 農業用紙・育苗材 | 紙、セルロース | 水分制御多孔膜 | 保水・透水性制御 |
| 印刷・記録する | 紙 | インク受容性多孔膜 | 印刷性、筆記性付与 |
| 医療・衛生材料 | 紙、不織布 | 液体バリア+通気膜 | 防水性と通気性の両立 |
| ワイパー・吸収材 | パルプ、不織布 | 毛細管構造を持つ多孔材 | 吸液・保持・移送機能の制御 |
| 絶縁紙 | セルロース紙 | 電気絶縁多孔膜 | 耐熱性、絶縁性、低誘電化 |
| 電池セパレータ的用途 | 特殊紙、不織布 | 微多孔膜 | イオン透過+電極間絶縁 |
| クロマトグラフィー・分析紙 | セルロース紙 | 精密多孔膜 | 精度向上 |
紙の材料的な特徴から成る多孔質材料
「紙」の材料的な特徴として、”短繊維を分散し、抄紙・脱水・乾燥して形成した繊維集合シート”、と捉えると、短繊維の湿式の抄紙が技術的な特徴ということになると思います。技術的な概念としては不織布に近いですが、歴史的には布と紙が存在していた状況において、乾式紡糸を積み重ねることで不織布が開発されたと考えられ、独立した技術による材料と言えるかもしれません。
紙材料の技術特徴を、湿式の抄紙技術と捉えると、紙の派生材料としては以下のようなファイバーシート類がこの範疇に入ってくると思います。これらの材料は、RO、NF、UF膜や、その他の複合多孔膜材料の基材としても用いられます。
| 材料 | 主な機能 |
| ガラスマイクロファイバー紙 | ろ過、電解液保持、電池セパレータ |
| 合成繊維湿式不織布 | ろ過、通気、包材、セパレータ |
| ナノセルロース膜 | 微粒子分離、毛細管移送、セパレータ |
| 炭素繊維紙 | ガス拡散、排水、導電、集電 |
| アラミド紙 | 絶縁、耐熱、含浸支持 |
| 金属繊維紙 | 高温ろ過、導電、触媒担持 |
まとめ
「紙」用途の多孔膜・多孔質材料は、布との違いとして、短繊維の湿式抄紙技術、剛性や折り曲げ性などの物性の違いが挙げられます。紙の用途からの機能活用の深化もいくつかご紹介しました。紙や関連用途の多孔膜の理解・選択でご参考になればと思います。
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