ろ過用途の多孔膜:ろ過方法やろ材形態・構造等

材料技術

ろ過用途の多孔膜のろ過方法や構造のポイント

ろ過用途の多孔膜を実際の用途に使用する場合は、膜材料単独で使用するというよりも、ろ過システムの中で加工された多孔膜ろ材の形態で使うことが多いと思います。また、ろ過の方法やろ過する対象の液体(流体)によって、ろ過のシステムが変わってきます。ろ過方法やろ材の形態・構造をどのように考えればよいか見ていきたいと思います。

まず、ろ過の方式としてはデッドエンドろ過かクロスフローろ過か、の選択があります。このろ過方式は、これまでの記事で少し触れてきましたが、ターゲットとするろ過区分によって、選択できる方式が決まってきます。ろ過用途の多孔膜:ろ過の孔径と方式。また、ろ過の目的、ろ過対象の液特性によっても選択できる方法が変わってきます。

ろ過区分デッドエンドろ過クロスフローろ過一般的な傾向
粗ろ過◎○低固形分はデッドエンド、高固形分はクロスフローも使用
MF◎◎低濁度液はデッドエンド、高濁度・高粘度液はクロスフロー
UF○◎水処理ではデッドエンド、濃縮・分画ではクロスフロー
NF原則不向き◎濃縮液を連続排出するクロスフローが基本
RO原則不向き◎濃縮側の塩類を排出するクロスフローが基本

また、多孔膜の形態として膜状か平板状か、中空糸状か管状か、もしくはその材質が有機材料膜かセラミックス膜か金属膜か、また、そのろ過の用途や要求事項によって、ろ材の形態・構造を選択していくことになります。

加工形態デッドエンド ろ過クロスフロー ろ過膜面積耐閉塞性洗浄性耐圧性適する原液
プリーツ型◎△高い低~中中中低固形分、低~中粘度
中空糸束型◎◎非常に高い中逆洗可能中水、低~中固形分
スパイラル型×~△◎高い低~中中高い前処理済み低固形分液
管状型〇◎低い非常に高い非常に高い高い高粘度、高固形分液
平板積層型〇◎中程度高い高い中高粘度、固形分含有液
セラミックモノリス型〇◎中~高高い非常に高い高い高温、高固形分、強薬品

ろ過方式について

ろ過方式のデッドエンドろ過かクロスフローろ過は、概念として供給流と膜面の関係によって分類できます。デッドエンドろ過は、他に「全量ろ過」「通過型ろ過」「直交流ろ過」などの呼び方があり、本稿はデッドエンドろ過に用語を統一します。デッドエンドろ過の特徴は、ろ過の対象の全供給液が膜を通過し、透過側にろ過膜を通過した液が得られることです。この際に、供給液中の分離対象の保持成分が膜面にケークとして蓄積し、時間とともにろ過抵抗が増加します。このろ過方式の特徴は、基本的に供給液中の分離対象が多孔膜上で分離され、透過液側は分離後の液成分をほぼ純粋に得られることにあります。この特徴は、医療用水の滅菌や半導体用の洗浄水ではこの方式が主流の理由になります。

また、このろ過方式は、基本的に低濁度、低固形分の液に適します。高濁度の液などを濾過する場合には、粒子が膜面にすべて蓄積するため、定期的な逆洗・フラッシング・交換が必要になります。その他、ろ過システムが簡単(循環ポンプが不要または小型)、原液回収率が高い等の特徴があります。

クロスフローろ過は、他に「十字流ろ過」「接線流ろ過」「タンジェンシャルフローろ過」などの呼び方があり、本稿はクロスフローろ過に統一します。クロスフローろ過の特徴は供給液が多孔膜面に平行に流れる際に、膜から透過液が浸透し、浸透により濃縮液となるというプロセスになります。膜面に平行な流れが堆積層を抑制しつつ、多孔膜の分離特性により徐々に清浄液が浸透し分離するため、供給液側では分離対象成分が濃縮される形になり、透過液側は基本的に清浄液が得られますが、透過液側に流す液の品質による影響を受けることになります。デッドエンド方式は基本的の「分離」なのに対し、クロスフロー方式は「濃縮」と捉えられると思います。

クロスフローろ過は、膜面に平行な流れが堆積層を抑制するため、長時間にわたり透過流束を維持しやすく、また、高固形分・高粘度・膜汚染性流体に対応しやすくなります。また、濃縮・分画・洗浄置換に適し、RO・NFおよび多くの工業用UFで標準的に使用されます。

ろ材の形態・構造について

ろ材の形態は、まず多孔膜の材料により選択できる構造が決まってきます。有機材料多孔膜ではロール状の平膜形態や中空糸膜形態を作成可能な材料です。セラミックス多孔膜はシート状の平膜や管状の加工が行われます。金属膜は基本的にシート状の平膜か径の大きな管状になります。

ロール状の平膜が作成できる有機材料多孔膜は、主にプリーツ型かスパイラル型の構造のろ過用カートリッジに加工されます。プリーツ型は基本的にデッドエンド方式のろ過に適します。スパイラル型はクロスフロー方式のろ過での加工形態の選択肢になります。

また、有機材料系で相分離による孔形成可能な材料は、中空糸状の多孔膜として用いられます。中空糸膜は、束状にすることでろ過の有効面積を大きくできる優位点があります。また、デッドエンドろ過、クロスフローろ過の両方式での活用が可能です。ただし、流路が細く、高粘度液では使いずらい、ろ材加工が特殊のためカートリッジ交換コストが高い、等の側面があります。

また、管状型、平板積層型は、有機膜以外にセラミックス膜、金属材料の選択肢があります。また、セラミックス膜ではセラミックスモノリス型などの形態に加工された材料があります。管状型は、中空糸より径が大きな管状で、中空糸のようなろ過方式や、キャンドル式と呼ばれるデッドエンド型のカートリッジで用いるろ過方式で使用されます。セラミックスモノリスは、細い管状型のセラミックス管を束ねてモノリスとしたろ材で中空糸束と管状型を組み合わせたようなろ材です。平板積層は、金属やセラミックス膜を、多層積層してデッドエンド/クロスフローに対応した構造に加工したろ材になります。

まとめ

ろ過用途の多孔膜材料は、実際の用途では、ろ過システムとろ過に用いられる加工されたろ材(カートリッジ状のものが多いと思われます)の形で活用されます。ろ過システムは、まずはデッドエンド方式かクロスフロー方式かのろ過方式の選択があり、さらにろ過する液やろ過目的によってろ過システムやろ材を選択することになります。ろ過用システムと、ろ過用多孔膜およびろ材形態の理解・選択でご参考になればと思います。

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