9-1.半導体業界の環境とビジネス:1947~1990年代

ビジネス開発

自動車産業に続いて、半導体業界の環境とビジネスの流れについて、PEST分析を行ってみます。自動車産業とは異なる産業構造の変化が見えてきます。
半導体産業のスタートは第1期の1947~1960年代です。この1947年は、アメリカのベル研究所で実用的な増幅・スイッチング機能を持つトランジスタが実証された年になります。この研究段階の技術が産業として育つ段階は、日本の民生電子産業の拡大が大きく寄与しました。ラジオ・テレビなどの家電の普及と小型化・高品質化に合わせて、半導体の需要拡大と集積化のサイクルが回り、半導体産業としても立ち上がった時期になると思います。
続く第2期(1970~1980年代)は、家電+半導体での産業拡大です。この時代は、半導体技術により、電卓、VTR、電子時計、ウォークマン、CD、ファミコンなど、新たな用途の家電が拡大した時期です。製品開発とセットで半導体開発を行う垂直統合型の企業体制がこの時代にはフィットしました。また、半導体の材料や製造技術が高度化することで、日本国内の製造装置、材料技術の産業が立ち上がりました。一方、これらの半導体やその製品の輸出拡大により、日米での半導体摩擦が生じました。
第3期の1990年代はパーソナルコンピューターの市場拡大です。この時期は、半導体の種類が増え設計が高度化し、半導体製造技術も微細線化が進みました。このため、半導体設計に専念するファブレス企業と生産専業のファウンドリモデルなどが確立されてきます。これらの技術開発には、投資の拡大が必要で、日本企業は垂直統合型の体制、バブル崩壊の影響、日米半導体摩擦の影響などが生じました。

半導体産業では、第1期から2期は自動車産業と同様、日本の戦後と高度成長、垂直統合型の開発体制などの波に乗ったPEST環境でした。一方、第3期では、大きな産業体制や技術開発の変化の影響を受けた、と考えられます。

 第1期 1947~1960年代第2期 1970~1980年代第3期 1990年代
時代米国で生まれ,日本の民生電子産業で育つ         家電+半導体の拡大
垂直統合型の日本が世界をリード  
パソコン、MPUの市場拡大
ファブレス・ファウンドリ型への転換
イベント米国でトランジスタ技術が誕生
日本企業が技術導入と量産化進める
ラジオ、テレビなど民生電子機器が成長
欧州は通信・産業機器,研究開発で存在感維持
韓国、台湾、中国は、まだ産業形成の初期段階
大型コンピュータとDRAM市場拡大
日本総合電機メーカーが研究,設計,製造,製品搭載を一体化
超LSI技術研究組合など、産官連携型の技術開発
日本製半導体の世界市場での存在感急上昇
日米半導体摩擦が表面化
パソコン市場の拡大
MPU、標準化されたソフトウエア基盤の影響力増大
米国ファブレス企業が成長
台湾ファウンドリモデルが確立
韓国はDRAMへの集中投資を継続
日本企業は総合電機型の事業構造を維持
Political冷戦下で電子技術が戦略技術となる
日本・米国同盟関係の中で技術導入
通商政策と技術ライセンスが産業形成を左右
日本政府による研究開発支援
日米貿易摩擦の激化
1986年の日米半導体協定
通商問題と技術競争の結合
冷戦終結
貿易・投資の自由化
東アジアの輸出主導型産業政策
日米半導体摩擦の余波
Economical戦後復興と高度経済成長
家電の大量生産と輸出市場の拡大
低価格、小型、省電力が製品競争力になる
メインフレーム向け高品質DRAM需要
設備投資の規模拡大
円高による輸出環境の変化
巨額の固定費とシリコンサイクル
日本のバブル崩壊 パソコン市場の急成長 製造設備投資額の上昇 設計と製造を分離する経済合理性拡大
Socialラジオ、テレビなど普及
大衆消費社会の成立
「小型で高品質な日本製品」の評価形成
日本企業の長期雇用と社内技術蓄積
品質・信頼性重視の企業文化
政府,企業,金融機関の長期的協調
パソコンとインターネットの普及 製品サイクルの短期化 終身雇用型組織と専門人材市場の差 起業とベンチャー投資の日米格差
Technological真空管からトランジスタへ
個別半導体から集積回路へ
量産技術と品質管理の重要性が増す
LSI、超LSIへの高集積化
微細加工,歩留まり,品質管理の進歩
DRAM世代交代
装置・材料産業の育成
EDAの高度化、半導体IPの流通
CMOS技術の進展
ファウンドリが提供する設計環境の整備
ポイント半導体産業は半導体単独成長ではなく、日本の家電という大きな最終需要と一体で発展。日本の家電+半導体垂直統合は当時の市場と技術に適合した合理的なモデルだが、次の産業構造への対応を難しくした。PCやMPUの技術開発・需要から、ファブレス・ファウンドリの組み合わせへ変化。日本はバブル崩壊、半導体摩擦、産業構造転換の負荷が影響。

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