フィルム材料の粘着、接着、密着について

材料技術

1.フィルム材料における粘着、接着、密着とは

フィルム材料の活用において、光学特性や物理特性の設計のためいくつかの層を重ねて多層化することがあります。またフィルム材料を例えばガラスなどの基材に貼って使用する場合もあります。

このように、フィルムに多層を重ねたり、基材と一体化させる場合には、粘着、接着、密着という技術用語が一般に用いられます。これらの用語については、Webの情報を見ると様々な解説がなされていますが、ここでは個人的にフィルム材料技術に携わってきた経験から、これらの用語の概念を整理したいと思います。

密着、接着、粘着の用語の比較概要を技術者目線の順番で以下に整理します。

用語英語表現用語の示す現象   材料
密着intimate
contact
①塗膜が基材に引っ付く
②材料同士がすきまなく接触する
 (①、②は異なる現象。
本記事では①を中心に記載する)
(特定の材料で規定されない)
接着adhesive
bonding
化学的な結合によって引っ付く  基材に強固に貼り付き はがせない液体状
接着剤等
粘着adhesion by tackiness軽い圧力で引っ付く比較的容易にはがせる粘弾性材料
粘着剤

2.密着、接着、粘着の用語の使われ方

粘着、接着、密着という用語は、技術者と一般ユーザーとでは使う頻度が異なる印象があります。技術者視点から使用頻度が多いのは、密着→接着→粘着、の順になります。一方、一般のフィルムユーザー問い合わせやフィルム材料をユーザー提案するような場合は、粘着について問われることが多い一方、フィルム接着についてはまれで、密着については塗膜がはがれるようなクレーム時に聞かれる用語という印象があります。

この用語の使い方の差異は、用語の示す技術概念と実際に用語の使用される場面との関係にあるように思います。次に、これらの用語の概念と使われる場面を解説します。

3.フィルム材料の密着について

技術者視点の順で、密着、接着、粘着の順にその用語の示す内容を解説したいと思います。

密着という用語は、2種類の異なる現象を示す場面で使われます。

1つめは、主に塗膜をフィルム等の基材の上に設けた際、その塗膜が基材にしっかり引っ付いているか、という場面です。このような用語は、一般には、壁にペンキを塗った後の塗膜のつき易さや、金属メッキが金属としっかり引っ付いているような場面でも使われます。

2つめは、フィルム同士を重ねたり、フィルム上に保護フィルムをラミネートした際にすきまなく引っ付いている状態を示す場合もあります。このような内容を示す場合は、”貼り付き性”などの表現を使うこともあります。

この密着の1つめについて、技術開発の目線では、フィルムとセットになる塗膜設計に必要な項目という感覚です。一般ユーザー目線からは、塗膜がはがれることはフィルム材料としてのクレームになったりするので、密着性能はフィルム材料の基本特性という感覚なのではないでしょうか。

4.フィルム材料の接着について

密着と接着という用語を使う場合には、いずれも異なる材料を強固に引っ付けるという概念が共通にあります。一方、密着にはその各層の材料は変えずに条件や処理などで引っ付けるという手段が思い浮かぶのに対し、接着では、各層の材料以外の接着剤を用い、化学的な結合で引っ付けるというイメージがあります。このため、接着においては接着剤という材料がポイントとなってきます。

フィルム材料における接着としては、材料の技術開発でいくつかのフィルム材料を積層する際にフィルム同士を強固に引っ付けたい、というケースがあります。よく知られているのは、偏光サングラスや液晶ディスプレイに用いられる偏光板で、PVA材料の偏光子を異種のフィルムで挟み込む際に接着技術を用います。また、フィルム材料をユーザーで基材に強く固定する用途、例えば壁紙などでも、接着技術、接着剤など使われるケースがあると思われます。

5.フィルム材料の粘着について

フィルム材料における粘着という言葉では、テープなどの使用がイメージされると思われます。その技術的な特徴としては、一旦軽く押し付けるように貼ることができ、また貼ったあと剥がすことができる、という特性が挙げられます(実際の特性としては接着に近いものもあります)。また、粘着特性付与には粘弾性を有する高分子材料から成る粘着剤が用いられることが多くなります。

この粘着特性や粘着剤については、フィルム材料の技術開発側の目線で考えると、フィルム材料とは別の材料、別の機能と見ることが多いように思います。このため、フィルムメーカーが材料供給、粘着メーカーが粘着剤を開発、といった、分業体制になることも多いと思われます。一方、フィルム材料を使用するユーザー目線から考えると、フィルム材料の機能を活用する際に、粘着剤について基材に対し貼り付けたり剝がしたりしたい、貼った後の耐久性が必要、といったように、フィルム材料の活用の際には粘着剤機能も製品として必要な機能として求められます。さらに、フィルム材料の使用用途が様々な場合、その使用用途に適した粘着特性の必要性があり、粘着剤の材料設計は幅広くなっていると考えられます。

6.まとめ

フィルム材料の密着、接着、粘着という用語は、概念的に近いこともあり用語が混乱したり間違えたりすることも多いのですが、大まかには、フィルム技術開発の段階では”密着・接着”の設計が重視され、フィルム材料の実用途では”粘着”の設計が重視されるように思われます。

また、フィルム材料の密着、接着、粘着の特性を付与する技術は、プロセス及び材料としてそれぞれ異なる技術が必要となります。また、フィルムの使用用途が幅広い粘着では、その必要特性や評価指標についても様々な検討がなされています。今後の記事で紹介していきたいと思います。

フィルム材料の粘着、接着、密着の用語や内容に関して、今回の記事を参考にしていただけるとうれしいです。

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