日本と欧州の知財環境の比較:出願から権利化

知的財産

日本、米国の知財環境を見ていくと、次に欧州の状況を把握したくなってきます。欧州の知財環境について、まずは特許出願から権利化にかけての官庁手続きについて整理してみたいと思います。

欧州への特許出願は、日本から検討する場合はEPOが多いと思います。EPOの制度上で特徴的な制度は、ESR、実体審査における判断基準(新規事項や進歩性判断)、分割出願制度の違い、UPC(2023年度から導入)などがあります。

ESRは特許の公開公報発行の前の特許性に関する調査報告書(サーチレポート)です。同様な制度はPCT出願にもありますが、ESRの方が審査に関する影響は大きく、私もこの段階で補正の検討を代理人とやりとりした経験があります。日本特許に関してはこのような調査報告書の制度はないのですが、審査請求の手続きが実質上そのふるい分けの役割をすることになるようです。

EPOの実体審査では、新規事項追加の規制が厳格と言われ、出願明細の記述をしっかりする必要があると言われます。また、進歩性判断ではPSA(Problem-solution approach)というルールがあります。個人的にPSAの解説を聞いたこともありますが、実際の経験値としてはそのレベルに議論が至る前に成否が決まったことが多かったです。

またEPOの特徴として、分割出願は可能ですが、日本の国内優先や米国の継続出願などの制度はありません。ただし、EPOでは審査終了前に分割出願を活用することにより、米国の継続出願と同様な戦略(多様な権利の確保、審査継続による競合技術への対応など)を取ることがあるようです。

また、EPOによる権利化は各加盟国に移行しなければ権利が生じないこと、また、最近欧州単一効特許制度ができ欧州全体を対象として権利活用ができるようになったこと、という制度も欧州の特許制度の特徴になります。

欧州の特許制度の特徴としては、EPOのルールに従って審査・判断されることが多く、米国の様に審査官との交渉や実務の判例による影響が目立たず、日本よりは若干審査として厳しめ、という印象になるでしょうか。

項目日本(JPO)欧州(EPO)米国(USPTO)
出願言語日本語英・独・仏英語
出願公開出願日から18か月優先日から18か月通常18か月
早期検索報告なしESRありなし
実体審査審査請求制度自動的自動的
審査請求期限出願から3年不要不要
審査官とのやり取り比較的柔軟厳格比較的柔軟
補正自由度高め厳格高い
Added Matter規制新規事項追加禁止非常に厳格比較的緩やか
進歩性判断容易想到性Problem-solution approachObviousness
その他審査上ポイント審査基準EPO GuidelinesMPEP(MPF、BRI等)
分割出願○○○
Continuation××◎
国内優先/CIP国内優先あり実質なしCIPあり
特許査定後登録GrantIssue
権利化後即権利発生各国有効化が必要
各国移行 or  UPC
即権利発生

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