今回から、日本の自動車産業の社会的・事業的環境とビジネスの流れについて、PEST分析等で追ってみたいと思います。なお、本稿の時代区分は、技術が登場した年ではなく、その技術や社会課題が自動車産業の競争軸として大きな影響を持ち始めた時期で示しています。
日本の自動車産業の拡大は第2次世界大戦後の戦後の復興からになります(第1期:1950~1970)。政策的には戦後の復興政策からのインフラ整備と国内産業の育成の目的がありました。社会・経済がより多くの多様な自動車を安定して生産し、人と物を運べるようにすることを求め、技術として設計した製品を高品質かつ低コストで量産する「作る力」を高めました。戦前からの軍用車製造技術と国内ニーズで自動車量産の経済効果と技術深化のサイクルが回り始めました。
続く第2期(1971~1985)は、石油危機と燃費競争の時代です。石油危機をきっかけに自動車の評価軸が「大きさや性能」から「少ない燃料で効率よく走ること」へ変化しました。政策的にも、国内・海外の燃費向上や排ガス規制が進み、この変化が小型車と高燃費車の技術開発のドライビングフォースとなり、燃焼の電子化(電気技術)、車両の軽量化(材料技術)といった技術開発のサイクルが作られました。結果として欧米に対して小型車を得意とした日本メーカーの世界市場進出を後押ししました。
第3期(1986~2000)は、自動車の商品価値が、走行性能だけでなく「安全・快適・環境」へ広がった時代です。この社会的な流れが、排ガス規制や安全規制の強化につながり、ハイブリッド車のプリウスの販売につながってきます。技術的には、機械中心だった自動車に、センサーとECUによる電子制御が本格的に組み込まれ始め、自動車産業の機械技術と家電・半導体産業の電子技術の一体化が進みました。この技術進展と自動車の安全・快適・環境価値が日本車の世界市場での存在感につながってきました。
このようにまとめてみると、これらの時代の自動車産業は、国内需要⇒小型・燃費価値による海外展開⇒機械・電子技術の融合による高付加価値化、という好循環に支えられたビジネス環境だったように思います。
| 第1期 1950~1970 | 第2期 1971~1985 | 第3期 1986~2000 | |
| 時代 | 復興・モータリゼーション | 石油危機・燃費競争 | 環境対応・高機能化 |
| イベント | 小型乗用車、トラック、バスの拡大 | トヨタ・ホンダ・日産世界進出 | 日本車の世界市場での存在感 プリウス発売(1997) |
| 産業形態 主な収益源 | 輸送機器の製造産業 車両の製造・販売 | 高品質・高燃費車の開発・製造 高付加価値車と部品 | 電子制御エンジンシステムの設計・開発 電子制御動力システムと電動部品 |
| Political | 戦後復興産業政策 道路や物流網など社会インフラ整備 国内自動車産業育成・国産化体制構築 | 省エネルギー・石油依存度を下げる政策 排出ガス規制の導入と強化 海外市場の燃費・環境規制対応 | 排出ガス規制強化・大気汚染対策 安全規制の拡充 各国で異なる環境規制への対応 |
| Economical | 高度経済成長による輸送需要拡大 トラックやバス中心の産業用途需要増 所得向上による乗用車市場形成 | 1973年と1979年の石油危機 原油価格と燃料価格上昇 大型車維持費増・低燃費小型車の世界需要拡大 | 自動車市場成熟・商品高付加価値化 グローバル競争の激化 部品産業と電子機器産業の重要性向上 |
| Social | 人と物を効率的に運ぶ 都市化と人口移動 国民生活向上・自動車所有への憧れ | エネルギー無限ではない・自動車経済性への関心 燃料費を含めた維持費重視 小型で扱いやすい自動車の評価 | 大気汚染への関心の高まり 快適性や安全性への要求・単なる移動手段から生活空間へ変化 自動車に対する価値観多様化 |
| Technological | エンジン技術、生産技術 工作機械、材料技術 品質安定化させる量産技術 | 燃焼制御、エンジン効率向上 車体軽量化、電子制御 品質管理、小型車の設計・量産技術 | 電子制御、排出ガス浄化技術 センサー、ECU(電子制御) ABSやエアバッグなどの安全技術 車内快適性を高める電子機器 |
| 価値源泉:商品 能力 | 輸送・移動手段の増加・多様化 作る力:機械工業 | 低燃費・効率よく走ること 動力制御:燃焼化学、電子 | 低燃費・低排出、快適性・安全性 電子制御:電子技術・安全技術 |


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